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執筆者の写真江川誠一

パラレルワーカーな日々⑫採点

(本ブログはアスリックニュース2024年3月号からの転載である。)


年度末の採点作業は、大学でほぼ終わり、高校ではまもなくラストスパートに入る。

私が現在、高大で担当しているすべての科目では、テストではなくレポートで評価を行っている。

私はその意義を、次のように考えている。


第一に、レポートを課せられることで、生徒・学生は授業で習ったことや考えたことの振り返りと定着が図られる。

レポートで求めるのは、初めて知った様々な知識を、自分の視点で具体的に落とし込み表現すること。

応用や結合のできる知恵へと昇華させることが狙いである。


採点では、身近な例示や具体的なイメージができているかを重視する。

そこに論理的考察や柔軟な発想力が加味されていれば満点に近くなる。

模範的な内容のレポートでも、その生徒・学生の視点や思いが全く見えない場合、平凡な点数になる。

ChatGPTのようなAIが生成するレポートとは違うものを求めたい。


第二に、レポート作成を通じて論理性とプレゼンテーション力が磨かれる。

生徒・学生から先生である私への、プレゼンテーションの機会と位置付け、どう表現すれば私に伝わるかを工夫させる。

高校生にはなかなか難しいので、ある程度の枠(フォーマット)を提示するが、大学生にはシンプルな問いで自由度の高いものとしている。


これに関する採点のポイントは、全体構成の論理性、一つ一つの文の質、図表や見出しのデザイン性などである。

ひとりよがりのレポート、推敲が足りないレポート、メリハリがなくわかりにくいレポートは厳しい評価となる。



第三に、採点を通じて、私から生徒・学生へフィードバックを行う。

授業内で都度フィードバックを行う科目もあるが、それでも全員に対して個別に十分なことはなかなかできない。

故に、点数にその役目を込める。

絶対評価を基本に、一部相対評価も含んだ合否判定。冷徹だが意図を持った評点。


私は同じ点をなるべく避け、差を明確につけるようにしている。

順位付けはくだらない上に、比べられたり不満に思われたりするリスクもあるが、点数にメッセージを込めるつもりで、あえてそうしている。


以上のような採点の過程で、授業内容や授業方法の反省が自ずと浮かび上がってくる。

匿名で行う生徒・学生からの授業評価とあわせて、次年度の授業へと生かしていく。

評価は常に難しく悩ましいが、私にとってはとても楽しいものである。

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