社会経済データからみたコロナ禍として、
①人口動態
②死因
③移動・交流
④外食・小売
と考察してきたが、これで最終となる。
⑤労働
今回は関連する重要なデータが多いため、ちょっと長い。
最後まで読んでいただけると嬉しい。
失業率は何を何で割ったものかご存知ですか?
今、3%前後ですが、働いていないものを人口で割ったらこんな小さい数字になるわけないですね。
適法な労働者でない子供(15歳未満)は除外するとして... 高齢者、障害者等のうち働くことのできないもの、専業主婦・主夫... どこまで分母から除くのでしょう。
最初の問いの答えは「失業率=完全失業者 ÷ 労働力人口」。
ここで、「完全失業者」と「労働力人口」は次図のような、もれがなくダブりもないツリーになっている。
「休業者」は、仕事を持ちながら、調査期間中に仕事をしなかったもの。
「就業者」は、「従業者」とこの「休業者」の合計。
「完全失業者」は、「調査期間中に仕事をしなかった and 仕事があればすぐ仕事に就くことが可能 and 調査期間中に求職活動等をしていたもの」のこと。
そしてこの「就業者」と「完全失業者」を足したものが「労働力人口」。
コロナ禍で仕事がなくなった場合、その人の状況によって「休業者」、「完全失業者」、「非労働力人口」のどれかに振り分けられ、「失業率」への影響はそれぞれ違うということに注意が必要である。
雇用調整助成金を受けた企業の従業員には、「休業者」が増えるだろう。
解雇になった人でも、その後求職活動や職業訓練をしていれば「完全失業者」で、それらを何もしていなければ「非労働力人口」である。
これらの関係性を押さえた上でデータをみないといけない。
前置きが長くなったが、ここからデータを考察していきたい。
労働力人口は最初の緊急事態宣言(2020年4〜5月)とともに大きく減少し、その後も前年を下回りながら推移していたが、11月にはやや持ち直した。
先に述べたように、従業者が休業者や完全失業者になるだけでは、この労働力人口は減らない。
2020年4月の、前月比59万人の大幅減は、仕事を失っただけではなく仕事を探すことすらあきらめたという厳しい状況を表していると捉えられる。
2020年4月の前月比で、労働力人口59万人減は、就業者数72万人減と完全失業者数13万人増に分解される。
就業者数は11月に回復の兆しをみせたものの、12月はそれが腰折れしているようにみえる。
完全失業者数は8〜10月において200万人を超えるなど、前年同月を約50万人ほど上回る水準で推移し、改善の兆しはみられない。
その結果、完全失業率(季節調整値)はじわりじわりと上昇し、8月以降は3%台に乗せて推移している。
コロナ禍により職を失い、一旦諦めて非労働力化していたものが、再び求職活動を始めた結果、完全失業率の上昇につながっていることを懸念する。
ただし、リーマンショック後の完全失業率は5%台であり、この3%台突入という水準自体は危機的状況とは言えない。
今後の推移を注意深く見守りたい。
就業者数を男女別にみてみると、明確に違いがあらわれている。
男は、緊急事態宣言直後は緩やかな減少にとどまったが、その後7,8月にやや持ち直した後、再び低下し年末にかけて最も厳しい状況となっている。
一方で女は、緊急事態宣言直後に前月比50万人という激減をみせたあと増減を繰り返したが、11月には大幅な回復傾向をみせた。
これらの傾向の相違は、後に述べる正規/非正規雇用の対照的な姿とも関連していると思われる。
自営業者・家族従事者の就業者数においては、コロナ禍による影響は明確にはあらわれていない。
正規雇用と非正規雇用で就業者数の推移を比較する。
正規雇用においては、年間を通じて比較的安定した水準で推移しており、コロナ禍においてもマイナスの影響は少なかったものと推測される。
非正規雇用においては、2020年4月に前月比マイナス131万人と激減した。
その後も回復の足取りは重く、8〜11月は順調に増加したものの4月の激減を埋めるには至らず、12月には再び減少に転じた。
業種別の就業者数を対前年同月比でみてみると、コロナ禍の影響度合いがうかがえる。
実数も考慮し大きなマイナスとなったのは、「宿泊、飲食サービス業」であり、緊急事態宣言以降年末まで低水準で推移している。
一方で、「不動産、物品賃貸業」、「情報通信業」では年間を通じて増加傾向となっている。
休業者数は2020年4月に突出した増加をみせ、5〜7月の減少でほぼ元に戻った後、昨年をやや上回る水準で年末まで推移している。
緊急事態宣言に伴う雇用調整助成金を活用した休業が、相当程度これに含まれると思われる。
これを男女別にみると、女のほうにより多い休業者が生じている。
ただし、前年の女の休業者数が男の1.5倍程度であることを勘案すると、それほど特徴的なことではない。
データを見ずして感覚的に物事を語るのは、大体において不正確である。
そこらじゅうにデータは転がっているのだから、覗きに行って、激しく触って、仮説を検証し続けたいと常に思う。
一方で、データの限界を見極め、謙虚に扱い、そこに表れない姿を真摯に考えること、そして現場に入っていくことが、あわせてとても重要だと思う。
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