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執筆者の写真江川誠一

血潮の戯言-当選通知-(2013年に執筆)

更新日:2021年1月20日

<起>

妻に先を越されました。

言葉に表せないくらい、ものすごく悔しいです。

「なぜオレじゃないんだ!」

絶対に私の方が"当選するにふさわしい"と確信してるんだけど…

本日、妻に骨髄バンクから重要書類が届きました。

どうやら、患者さんとの適合通知のようです。

最終的にドナーとなる確率は、現時点ではまだ1/10ぐらいだと思いますが、"進む"か"退く"かを早く決めないと。

明日、家族会議を開催します^^

15年前に私もドナー登録をしました。

きっかけは決して立派なものではなく、自分の身体でダイレクトに人の命を救うってすげーなという単純な気持ちからです。

しかし、まだ一度も通知は来ずorz

不謹慎かもしれませんが、「当選通知」が私ではなく妻に先に来たことが、本当に悔しいです。

ただ、現実問題として、妻が"進める"かどうか、"退く"べきかをシビアに判断しないといけません。

コーディネートが進みドナーに選ばれた場合、かぜをひいたり気が変わったりということはあってはなりません。

移植準備は患者さんの身体に大きな負担となります。

途中でできなくなったら、身体だけでなく患者さんの心にも大きな影響を与えます。

悔しくてたまりませんが、この件、終了するまでレポートしたいと思います。


<承>

骨髄移植のドナー候補者に選ばれた妻。

今は、患者さんとHLA(白血球の型)が一致したという初期段階です。

候補者が5人いるのか1人しかいないのかということは、ドナー候補者はもちろんのこと、コーディネーターにも知らされません(コーディネーターは全国の各地区事務局に配置され、ドナーの方と病院や骨髄バンクとの連絡・調整を担当)。

進むかどうかはドナー候補者の自由意思によらねばならないのですが、候補者数の通知はその決定に多大な影響を及ぼすからです。

通知が届いてから2日後、家族会議を開催しました。

骨髄バンクから送られてきた資料を読み込んだ私が、妻と娘に説明します。

ドナーの主なリスクは…

1.全身麻酔に伴う事故(確率は非常に低いがゼロではない)

2.手足のしびれ等の後遺症(確率は非常に低いがゼロではない)

3.採取部位における一過性の痛み(痛みの大小や期間等は人によって差がある)

ドナーの主な負担は…

1.合計7回程度の通院(通常は平日の日中)、骨髄採取前後の3泊程度の入院

2.服薬や活動等の制限(移植直前のキャンセルは、患者さんの命に関わる)

※費用負担はない

家族会議の結果は「進め」でした。

妻はチャンスととらえ、

娘はそんなすごいことができるんやったらやったほうがいいと言い、

夫はただただ羨ましがる^^

リスクとか不便さはすべて許容できるってことなんだけど、なんだか能天気な家族ですみません^^;

最終的にドナーは、

1.候補者と家族の同意(移植までの日数や方法も含めて)

2.候補者の健康面での適格性

により、1人に絞られます。

「1」については、希望日、希望病院と現在の健康状態を記して、早速、郵送で意思表明(ドナーに選ばれた後に最終同意が改めて必要)をしました。

「2」について、ひっかかりそうな項目がいくつかあって、正直、最終的には選ばれないだろうなあという感じがしています。

次はコーディネーターから電話がかかってくるのを待つのみですが、さて、どうなることやら。


コーディネーターから電話がかかってきました。

指摘された懸念事項は次の通り。

1.貧血

2.花粉症

3.ハチ刺され

貧血はやっぱりひっかかったかって感じ^^

花粉症とハチは意外!なんで???

ドナー候補者は花粉症の市販薬を飲んでおり、ハチに刺された時は念のため病院へ行っています。

どうやら、薬の種類と投薬時期が問題となるようです。

事実を伝えると、

「健康診断結果を送って下さい。それとともに判断させて頂きます」

とのこと。

確認審査に進めるかどうかも微妙になってきた…。

「たぶん失格や…」

落ち込むドナー候補者。

でも、選ばれなかったとしても、既に患者さんを救うチームの一員になっていると思うし、後は、他のドナー候補者がカバーしてくれることを祈るしかない。

そしてもしかすると、主治医はこう言って励ますかもしれない。

「ドナー以外にも、ドナーになってもいいよって意思表明した見ず知らずの方がいるんだよ^^」

移植準備で無菌室に入った不安いっぱいの患者さんに。

もしくは移植後の過酷な拒絶反応と戦う患者さんに。

というようなことを話し合った後の家族の会話。

ドナー候補者「自分が健康にならないと人を助けるなんてできないね^^;」

その娘「もうハチに刺されたらあかんでーw」

その夫「生レバー食べて、血ー増やしやーww」


えっと、落選しました。

花粉症とハチ刺されの薬は、ステロイドが入っておらず問題なかったようです。

貧血も厳しいレベルだったようですが、他の要観察項目がバレてそれでNGに。

ドナー登録そのものも取り消しとなりました^^

どうもすべて、ドナーの安全性を考慮してのチェック項目のようです。

コーディネイトは終了しましたが、この経験を通じていろいろ学びました。

1.飲んでる薬や軽めの要観察項目についても、ドナーのリスクを高めることがある

2.ドナーの安全性が想像以上に高いレベルで確保されている

3.患者さんの状態やドナー候補者の数に左右されない仕組みにて、厳格な審査が行われている

「この要観察は若いときからずっと出てて…」

「医者からは毎回『こういう体質ですね』って言われてて…」

「私は大丈夫ですから…」

と粘った妻^^; 通用しませんでした(当たり前)。

"転"で書いたようなお話がコーディネーターからあったようです^^

後は祈るのみ( ̄人 ̄)

当選から落選までの2週間。

命の尊さなんて大げさな言葉を持ち出して話し合う必要はありませんでした。

患者さんの命や自分たちのリスクときちんと向き合うだけでいい。

崇高な自己犠牲とはまったく思っていません。

骨髄移植ドナーになるということはこれ以上ない自己実現のチャンスと考えたから。

妻は再登録に向けて…と言いたい所ですが、体質的な部分でNGが出たので諦めモード。

私は手荒れや蕁麻疹に耐え(ステロイドが効くんだけどなあ)、引き続きチャンスを待ちます。

そして、気休めに献血を続けますw


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1 Comment


斉藤 崇範
斉藤 崇範
Jul 13, 2020

いつも献血にご協力いただきましてありがとうございます。

何度か血液センターでお会いしていますが、アイコンの写真とはかけ離れているので

たぶん私の顔は想像もつかないと思います(笑)

私の友人でも「当選通知」が届いて実際に骨髄を提供した者が3名(内、1名は2回提供)

そうやって骨髄の提供を受けて命を頂いた友人知人が2名います。

10年以上前は骨髄バンクに登録するだけでも、『チャンス』を熟読し、家族の理解を得て

血液センター等に出向き、20分ほどの生々しいビデオを見せられて初めて採血という流れでしたが、現在は『チャンス』を読んで家族の理解さえあれば、簡単に登録することができるようになったのは、バンクの底辺を広げる意味でも良い方向に向かっているような気がしますし、競泳の池江選手の発言等でたくさんの登録者が増えたという事実はとても喜ばしい事でもあると思います。江川先生ほどの前向きな方は少ないでしょうが、骨髄バンクだけでなく献血でも人の役に立ちたいと考える方が一人でも多く増える事を願って、献血の現場に立ち続けたいと思っています。

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